第10日目 エッグスン・シングスのサービス

エッグスン・シングス

 2週間の比較的長期な旅行とはいえ、10日目となるとさすがに先が見えてきて気持ちが少し焦る。今ごろになってあそこも行きたかった、ここも行ってみたかったなんていう希望が出てくる。

 毎年来ているのだからワイキキ近辺はもう行くところなんかないはずなのだが、やはり2度3度と行ってみたいところはあるし、食べてみたいレストランもある。今回出発するに当たって大急ぎで作ったレストランリストを見ても、これまで行けたところはほんの2つ3つだけである。

 そういうわけで、今後はなんとなく行けばいいやではなく、是非行ってみたいところを優先的に回ろうと考える。実は昨晩こう考えて今日の朝食は、「エッグスン・シングス」で食べることにした。

 パンケーキの有名な店であるが、ワイキキからちょっと離れているのが玉に傷だ。ヒルトンハワイアンやロイヤルクヒオあたりからなら歩いていけるかもしれないが、バニヤンからはちょっと遠い。

 いっそレンタカーで行ってしまおうかとも考えたが、付近の地図を見ても入りやすそうな駐車場が見当たらない。ハレコアH前の駐車場がいいかなとも思ったのだが、駐車料金とバス料金を比較するとそれほど変わらない。ならば安全を期してバスにしようということで、この日は6時に起きて7時にバニヤンを出発。

 バスはアラモアナ方面ではなくダイエー方面の2番13番バスを利用する。カラカウア通りに出て二つ目ぐらいの駐車場で降りれば、店はちょうど道の反対側だ。7時20分に到着。早く着いたつもりだが、すでに店の前には15人ぐらい待っている。早速店内に入り名前を人数を告げ、ページャー(順番になると音が出る機械)をもらい、店の前のベンチで待つ。ちょうど正面から朝日が昇ってきて異様に眩しい。

 我々が待っている横を次から次へと人が出入りする。ある人は入店、ある人は我々のように席の予約、そしてある人はテークアウトのオーダー。それやこれやで入り口付近はいつも人が行き交い大混雑だ。こりゃ相当待たされるなと覚悟を決めて待つ。

 10分、20分、そろそろ痺れが切れてくる。30分、我々より早く来て待っていた人はいなくなった。いよいよ順番か。しかし機械はうんともスンともいわない。変だなあとは思ってみたものの、まあ順番にはいろいろあるのだろうと思いそのまま待つ。しかし40分後、さすがにおかしいと感じた。すでに我々より後から来たと思われる人が入店を始めたからだ。

 店内に入り予約の名簿を見てびっくり。我々の名前が線で消されている。どうやら機械の不調で音が鳴らず、呼び出しに応じないものだから抜かされてしまったらしい。これにはさすがにちょっと不愉快に。すぐにレジのおばさんに、this is my name、I am not calledとかなんとか言うと、謝るでもなく、それならそこのテーブルへ、という投げやりな指示

 この店でこのような不愉快な扱いを受けたのは初めてなので、いささか驚き、立腹しながらも、それを言葉で表すことも出来ず、まあ怒っていても食事がまずくなるだけだ、間違いはあるさ、と自分を諌めてテーブルにつこうとした。

 ところが今度はそのテーブルがダブルブッキング。そこに座れと指示したおばさんが、どうやら二組の家族に同じ席を指定したらしい。先に座ろうとした欧米人の家族に非難と不信の視線を浴びせられ立ち尽くす我々。それでもおばさん、謝ろうとはせず、またまた新しい席を指示。ようやく座れてホット一息だが、どうもレジのおばさんの扱いに不信を感じる。

 オーダーを聞きに来たウエイトレスのおばさんは打って変わってエッグスンらしい陽気なおばさん。表面的には機嫌は直ったが、心の中では疑念が渦巻いている。オーダーはアーリーバードスペシャルを二つ。これにコーヒーと飲み物。

 スペシャルはパンケーキが3枚とスクランブルエッグ。3枚は多いので夫婦各1枚を息子に渡す。パンケーキはいつものようにモチモチした感じでうまい。散々待たされたのでいつもよりおいしく感じられるが、いかんせん客が多いのとテーブル間が狭いので落ち着いて食べる事が出来ない。

 まだ待っている客が大勢いる事を考慮して、食べ終わって早々に退散することにした。料金は15ドルちょっと。ところがチップを含めてこの料金を払うと、帰りのバス代の1ドル札がなくなってしまう事が判明。これは先にレジで会計を済ませ、ついでにお釣りを1ドル札でもらえばよいなと考えレジヘ。

 相変わらず混んでいるレジで支払いを済ませ、合間を縫って「please exchange small bills」と言ったのだが、周囲がうるさいのと私の発音が悪いのと、二重のアクシデントで、おばさんは私の言う事が聞き取れない様子。

 それだけならしょうがないと諦めるのだが、どうもおばさんの様子が「この忙しいときに何を訳のわからないことをぐちゃぐちゃ言っているの」というようなニュアンスで私の顔を斜めに見上げて「Ha〜!?」と一言。

 さすがに私は二の句が告げず、もういい、と手を振り、渡されるお釣りをそのままもらった。これはかなり不愉快だった。(これを書いて、またまた新たに当時の不愉快な気持ちを思い出してしまった)もらったお釣りの中に1ドル札も含まれていたので、手持ちの1ドルと合わせて、バス代家族3人分の5ドルを差し引き、2ドルだけチップをテーブルに残してきた。ウエートレスのおばさんに悪いイメージはないので申し訳ない感じだが、今回だけはしょうがない。

 それにしてもエッグスンははっきり言って、人気が先行するあまり客が多くなり過ぎてサービスがおろそかになっているような気がする。思うに数年前の火災から立ち直った、というニュースがセンセーショナルで、各種のガイドブックで紹介されてしまったことも一因だろう。(我々もその一部なので大きなことは言えないが)パンケーキだけならワイキキでも食べる事が出来る。

 確かにエッグスンのものは他とはちょっと味わいが違うといえるが、ワイキキからわざわざバスで往復してまで行く価値があるだろうか。今回はちょっと疑念を抱きつつ、来年は行かないかもしれないなと感じた。

 なお帰りがけにリムジンでエッグスンに来た日本人を見た。これには正直驚いた。人気の凄さを改めて感じた。おいしいパンケーキだけに、サービス面での不評でリピーターが減ってしまうことが心配だ。接客業の難しいところだろう。



第10日目後半へ


旅行記表紙に戻る


トップページヘ